第2回 税理士事務所の選び方
前回は規模別税理士事務所の特徴を解説いたしました。
特徴がわかったところで、今回はどういう税理士事務所を選べばいいのかを解説します。
まず用語の定義をおさらいします。
この後、大規模、小規模などの表現が出てきますが以下の意味合いで使用します。
分類 | 税理士 | 担当職員 | パート | 従業員数 |
1人税理士 | 1人 | 0人 | 0人~1人 | 0人~1人 |
小規模 | 1人 | 1人~5人 | 1人~5人 | 2人~10人 |
中規模 | 1人~3人 | 5人~15人 | 5人~15人 | 10人~30人 |
大規模 | 5人以上 | 15人~ | 15人~ | 30人以上 |
結論から申し上げますと、
自身のニーズに合った税理士事務所を選びましょう。
あなたは税理士と顧問契約をする際に何を求めますか?
まずはご自身のニーズを考えてみてください。
それによって、どういう税理士事務所を選べば良いのかが変わってきます。
<とにかく安い顧問料でやってほしい>
まず最初に思い浮かぶのが顧問料でしょうか。
とにかく安く顧問料を抑えたいのであれば、
前回の記事にも記載したとおり、おススメは拡大志向の小規模事務所になります。
第5回の記事で解説する予定の「税理士事務所の顧問料について」で詳細はお話ししますが、
会計データの入力など自分でできることは自分でやりましょう。
安いところだと 月額顧問料 10,000円 決算料 100,000円 年間顧問料 220,000円ぐらいの顧問料で
契約することは可能です。
ただし、年間30万円以下の顧問料では、
月次報告や節税のアドバイスなどは期待しないほうがよいです。
知識の乏しい職員が担当者となり、質問をしても明確な回答が得られない可能性が高いです。
法人税や消費税の申告、年末調整等の必要最低限やるべき手続きをやってもらうだけでいいという方は
拡大志向の小規模事務所に依頼してみてはいかがでしょうか?
拡大志向の小規模事務所の探し方
→ 税理士紹介サイトを利用する
→「税理士 〇〇(地域)」で検索して税理士事務所のHPで確認する(検索順位1ページ目)
詳細は第3回 税理士事務所の探し方で解説します。
<多少高くてもいいから税務申告だけじゃなくて付加価値を求めたい>
顧問料が多少高くてもいいということであればクオリティを求めましょう。
では、クオリティを求めるとして、具体的にはどういったことを求めますか?
■節税のアドバイスをもらいたい
誰しもが払う税金は最小限に抑えたいと思っているはずです。私自身もそうです(笑)
ただ、契約前にその税理士が節税のアドバイスを積極的にしてくれるのかどうか判断するのは困難です。
第4回の記事で面談時に税理士に質問すべき項目をまとめますので、その内容を質問してみてください。
明確で納得のいく回答が得られたらその税理士は節税に強く、
積極的なアドバイスをしてくれる可能性が高いです。
■相談したいことがたくさんあるのでレスポンスよく対応してほしい
税理士事務所と契約になる前段階のやり取りでまず判断しましょう。
契約前の時点でちょっとでもレスポンスが遅いと違和感があった場合は注意が必要です。
契約前は一番レスポンスが早くなるものです。
だからこそ、その時点で遅いということは契約後はさらに遅くなる可能性大です。
また、相談したい内容が多岐にわたる場合は、必ず契約前に実務担当者と顔合わせをしましょう。
基本的に相談はその担当者経由で行いますので、その担当者との相性が重要です。
事前に何個か質問を用意して契約前に実際の回答を確認してみるのもいい方法ですね。
税理士はすべての士業の窓口と言われています。
なぜなら、法人の顧問税理士契約率が90% 顧問社労士が30% 顧問弁護士が10%と言われており、
中小企業の経営者は士業がそれぞれ何をしているのか明確に把握していないため、
今抱えている悩みをどの士業に相談したらいいのか分からないということがよくあります。
そこでまず顧問契約をしている税理士が窓口になって
適切な士業に割り振るという流れになるケースが多いです。
そういう意味では税理士は専門の税金のことだけでなく
その他の分野でも浅くてもいいので広い知識が求められます。
中には税金のことしか話ができない税理士、担当者もいるので注意が必要です。
(税金のことすら話せない人も・・・)
<〇〇業に強い税理士、融資に強い税理士と契約したい>
その業種に特化した税理士は専門性が高いケースが多いです。
よくあるケースが 医業特化!(専門)飲食業特化!(専門)創業融資に強い!あたりでしょうか。
大体の場合が〇〇業特化と宣伝しているので、HPを確認すれば分かるかと思います。
その際の注意点をいくつかご紹介します。
■なんちゃって特化事務所には要注意!
複数のHPを持っており、医業特化!飲食業特化!建設業特化!と集客のために
複数の特化専門HPを持っている可能性があります、
その税理士事務所が他のHPを持っていないか事前に確認しましょう。
■似ているようで全然違う「〇〇業に強い」は要注意!
〇〇業に強い!というのは正直誰でもいえることで非常に抽象的な表現のため注意が必要です。
■融資成功率〇〇%!は要注意!
融資に強いことをアピールしている税理士事務所のHPによくある表現ですが、
この〇〇%はいくらでも自分で作れる数字ですし客観性が全くありません。
実際に100%であったとしても誰がやっても確実に通る融資支援しか行っていない可能性があります。
その税理士事務所がご自身の業界に詳しいかどうかは面談前質問で確認しましょう。
自身の業界について何も知識がない税理士事務所とは契約はやめておいたほうがいいでしょう。
まともな経営アドバイスは受けられませんし、なにより特殊な業界であればあるほど、
仕組みを把握していなければ税務処理を間違えられてしまう可能性があります。
〇〇業の顧問先は何社ぐらい契約していますか?とか
〇〇業をわかっている人にしかわからないような質問をしてみるといいでしょう。
<自分の事務所と場所が近い税理士事務所がいい>
自分の事務所と税理士事務所の場所はもちろん近いに越したことはありません。
徒歩圏内でいける場所にあれば、郵送の必要がなくその分コストが削減できます。
ただし、今の時代チャットやzoom等の音声通話サービス、
データ共有サービスなどを利用して、顧問先様から資料を郵送してもらったり来所してもらうことは
どんどんなくなってきています。
逆に、いつまでも郵送対応やFAXを使っている税理士事務所は時代遅れと言わざるを得ず、
そういう税理士事務所(税理士)は税制改正等の最新情報に疎かったり、
顧問先様に非効率な作業をお願いしたりとあまりお勧めできません。
今の時代、近い場所にあるかどうかはそれほど重要ではないかと思います。
ここからは税理士規模別におすすめの方、おすすめできない方をご紹介します。
- 1人税理士
〇(おすすめできる方)
拡大志向ではない方
→ご自身と考え方が共感できると思います。
税理士に直接対応してもらいたい方
→1人でやっているので当然に。
×(おすすめできない方)
拡大志向の方
→方向性が違うので考え方が合わない可能性が高いです。
自身の作業量をできる限り減らしたい方
→基本的に1人で全て作業をするので税理士に丸投げしたい方はおすすめできません。
△(ケースバイケース)
専門的な知識が欲しい方
→これはその税理士次第なので何とも言えませんが、高い専門性を持った税理士と直接気兼ねなく
相談できる可能性があるのは1人税理士です。大規模事務所は高い専門性を持った税理士はいるけど
自身の担当者になりません。
- 小規模事務所
〇(おすすめできる方)
とにかく安く抑えたい方
→前述の通りクオリティを気にしなければ(拡大志向の小規模事務所に限る)
税理士に直接対応してもらいたい
→契約前に税理士が担当するか確認しましょう。
作業量が多い、取引量が多い業種の方
→パートを雇っているのである程度作業量が多くても対応可能です。
×(おすすめできない方)
高い専門性を求めたい
→税理士自身も担当職員も高い専門性がある可能性は一番低いです。
- 中規模事務所
〇(おすすめできる方)
拡大志向の方
→税理士自身も業界上位10%の規模まで拡大した経営者です。一緒に拡大していきたい方はおススメです。
とにかく自身の作業量を減らしたい方(丸投げしたい)
→従業員がたくさんいるので、顧問料次第では必要資料を送るだけで対応してもらえます。
ただし、精度の高い税務申告をするためにはある程度顧問先側で資料をまとめておかないと
知らぬ間に間違えた処理をされてしまい、税務調査で痛い目を見ることがあるので注意です。
×(おすすめできない方)
拡大志向ではない方
→中規模事務所と契約するメリットはほぼありません。顧問料が中途半端に高く、税理士が担当につかない、運よく優秀な担当者がついても数年後にはその人も独立してしまう可能性大といいところがありません。専門性が高い、優秀な税理士(経営者自身)に見てもらえるなど、よほどのことがない限りおススメしません。
なお、大規模事務所はそもそも契約することが難しいので割愛します。
将来上場を目指したい、年商数十億の会社を作りたい など、最初から大規模事務所と契約したいのであれば話を聞いてみるのはありかと思います。
以上 今回は 税理士事務所の選び方 を解説いたしました。
皆様のお役に立てれば幸いです。
次回は、税理士事務所の探し方 を解説します。